債権回収にあたっては、債務者がどのような人物か、債務者との交渉経過、債務者の資産状況、人的・物的担保の有無、手持ちの証拠等から、どのような方法を取っていくのがベストな流れかを検討する必要があるでしょう。
債権回収の流れ
債務者と話し合いができる状況であれば、任意で和解することも検討する余地があります。支払ができなくなった債務者は、一社の債務だけを滞納しているわけではなく何社からも滞納しているという場合が多々あります。
このような場合に、満額の回収を目指そうとして頑なに訴訟に進んだとしても、訴訟係属中に債務者が破産するという事態も考えられます。そのような事態になる前に、100%ではないにしても任意の話し合いで少しでも回収を図ることを考える場合もあるでしょう。
また、任意で和解する場合、債務の弁済内容について公正証書にする場合もあります。公正証書にする場合は、債務者が金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨の陳述(執行受諾文言)が記載されている公正証書にすることが必要です。
これにより、不履行があった場合に訴訟手続を経ることなく強制執行に移行することが可能になります。
債権回収の方法
このように、債権回収においては、個別の事案に応じた対応が必要となってきます。債権回収の方法として仮処分、訴訟、強制執行等もありますが、あくまで事案に応じて作戦を立てることが大切です。
また、債務者の資産状態は変化しますし、債務者が資産を散逸・隠匿してしまうことも考えられますので、債権回収では迅速性を意識することが大切になってきます。債務者が最終的には破産する可能性があることも考慮して、早め早めに対処していくことが肝要といえます。
さらに、債権回収の場面においては、消滅時効の点も考慮する必要があります。
債務者に対する請求が遅れたために、消滅時効を主張されて1円も回収できなかったという事態は避けなければなりません。
この点、民法は、原則として、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、あるいは、権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、それぞれ時効により債権は消滅するとされております。
これは、近時の民法改正により変更となったものであり、改正前の10年よりも短くなっておりますので、時効の管理には十分に注意する必要があります。
もし消滅時効間近であることが気づいたときは、早めに債務者に催告したり訴訟提起するなどして、時効が完成するのを阻止する必要があります。債務者から権利の承認を得ることで時効の完成を阻止することもできますので、場合によってはその方法を取ることも考える必要があるでしょう。
まとめ
このように債権回収においては、どのような選択肢を取るか、権利を喪失するおそれはないか、など、各種事情を考慮した上で進めていく必要があります。
また、債権回収の段階に至る前、理想を言えば契約時から債務者の財産状態に関する情報を入手しておき、いざというときに備えるという心構えが大切と言えるでしょう。可能であれば人的・物的担保を取っておくことも必要です。